--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2009-05-21

『幻想の果つる先、夢と境の向こう側へと。』

          『幻想の果つる先、夢と境の向こう側へと。』

【5】



「ほへぇ~・・・・」

つい、声を漏らしてしまった。
別にマッサージとかエステとかで気持ちよくて極楽極楽と満喫して
つい出ちゃうようなあんな蕩けきった声なんかじゃない。

俺は『紅魔館』の内装の豪華さに驚嘆しただけだ。

「お客様・・・?」
「・・はっ!いやいや、何でもないですよ?」
「・・・観光でしたらお嬢様に会われた後でも出来ますので、それからにして下さいね?
あ、それとお客様がここに来るのはこれで最後とはならないはずですよ。」
「え?それってどういう・・・」

明らかに含みのある言い方だったが、咲夜さんは答えてくれそうにない。
そういえば、何故か咲夜「さん」と呼んでるけど他意はない。
何故かそう呼ばないといけないような気がしてるんだよ・・・不思議だ・・。

「理由は何れ分かりますよ。」

半ば思った通りの答えが返ってきた。
俺は何も言ってないんだけど、どうやら雰囲気で察したみたいだ。
・・何だこの人、すっごく有能じゃないか・・そりゃ美鈴も憧れるわな・・。

とかそんなことを考えている内に、廊下の突き当たりにある一際大きな扉の前に来た。
言わなくても分かって貰えそうなんだけど、廊下にはお決まりの赤い絨毯ですよ・・・!
そして外観がデカイだけじゃなく、それに合った内装の大きさを兼ね備えているかのように
廊下には誰が使っているのか気になっているほど、多くの扉―部屋?―があった。
・・・蝋燭の灯り使ってるけど、確か建築法とか・・ああ、『幻想郷』だから良いのか。

「では、私は一旦此処で下がらせていただきます。」
「はい、わかりまし・・・・・って、え?」

なんて言ったんだ今・・・

「少々、所用がありまして抜けなくてはなりませんので。」
「えっと、俺って確か案内されてる、って思ってたんだけど・・・」
「ええ、それは間違ってはいませんが、少し鼠を退治しなければならないので・・はい。」

すごく良い笑顔で何を言っているんだこの人は・・・
ただ、どうでも良いことなんだが良い笑顔で言った瞬間に、微かに部屋の方から
小さく爆音が鳴り響いた気がしたんだけど、咲夜さんの声でほとんど掻き消されたようだ・・
だからかいまいち確証が持てないって言うかなんて言うか・・・

「ねえ咲夜さん・・さっき部屋から物音g」
「してませんよ、それにこの部屋のお方も貴方に会いたがっているので・・都合が良いのです。」
「え!ちょっと、それってつまり俺普通に此処に連れてこられただけで、そのお嬢様ってかn・・・?」

俺は話し続けていた、はずだ。
確かにさっきの台詞を言うまでは、確かにそこに、目の前に咲夜さんは居た、はず。
ところが、だ。俺が気付けば。

姿は消えていた。

人間ってそこまで早く動けたか?とか、無意味な考えが頭をグルグル回るけど
結局答えなんて出ないし、そういえばルーミアは空飛んでたよな~っとか
でもあの子達って妖怪?だったはずだし、それだと美鈴は空飛べる・・?いやいや。
あの人は多分・・・おかしな妖怪、なんだろう。きっと。

え~と、とりあえず今することは・・・。

「お邪魔しま~・・・・・・す・・・・・。」

小さく声を立てながら、目の前の部屋に入ることだった。
ゆっくり入ったのに扉を開けたらギイイィィィィィィィィィィィィッッッッ・・・・って
メチャメチャ軋みまくって音が鳴るから、もう心臓がバックバク状態に。やめぃ。

そうして、その部屋に足を踏み入れて見回してみると。
何とも奇妙な光景が繰り広げられていた・・・コントかと思うくらいに。
つーか、一度ドアを閉めて、また開けて、まだ信じられなかったからついつい
目を擦り擦り、何度も確認したけど・・・やっぱり同じ光景しか見えなかった。

吹き飛ばされたみたいに大穴が空いた天井。

中心に佇むテーブルの横でおよよよと泣き崩れている紫色の少女。
帽子に月のワッペン?アクセサリーみたいなのが映えている。
何故か一冊の本を抱えているのは、大事なものなんだろうか・・・?

そして、本棚の上で袋に本を詰めながら大笑いしている金髪の少女。
それも分かり易すぎるほどの魔法使いスタイルの子だ・・・
箒に乗って空をふわふわ飛んでいる時点で、もうそうとしか見えない・・・!


・・・何だろう・・・この、ダメ亭主とそれに振り回される妻の光景。


「ダメ~・・それは貴重なクロウリーの原書なの~・・・」
「あっはっは!大丈夫だって、死んだらちゃんと返すぜ!」
「それは返さないって意味じゃないの~・・えぅぅ・・・・」

・・・・名前も知らないけど、こればかりは不憫と思わざるを得ない・・・!
というかそれは普通に泥棒なんじゃないかと思うんだが・・・
あ、紫色の女の子が少しだけ復活したみたいだ・・・

「そう言いながらまだ前に奪っていったあそこの本棚の二百冊以上、まだ返して貰ってないわ・・!」
「アレはまだ読み終わってないんだぜ!」
「せめて読み終わってから来なさいよっ・・・!」
「私の中で燃える好奇心に火が点いたら止まらないんだぜ!」

論法が最悪すぎるんだが、どうにも憎めないのは何でなんだろうか・・・爽やかさ?
というか二百冊以上・・・?どんだけ借りパクしてるんだあの子・・・
・・・ん?あの子、どっかで見覚えがあるな・・何処だ・・・?

「そんな好奇心捨てちゃいなさいよっ!」
「いやいや、魔法使いたる者、常に探求していないと道は開けないんだぜ!」
「その道で言った挙げ句がこれじゃないのっ・・!」

と叫んで―いるように見えるだけでそんな大声じゃない―た女の子は
大穴の空いた天井をビシッと指さした。
ていうかアレあの子の所為なのか・・・どうやったらあそこまで・・・
あ、でも魔法使いだからやれば出来ないことはない、としてもやり過ぎだろ・・・

「素晴らしい結果のためには多少の犠牲はつきものだと思うんだぜ・・?」

無理があるとしか思えない・・・
よく聞く常套句なのに、何でこの時ばかりはこんなに胡散臭くなるんだ・・!

「なんでそんな微妙に自信が無さげなのよ・・貴方は・・・ん、あれ?」

そう聞けばそう見えなくもない、んだけども何かこの子目つきが・・・
ってこっち見られて・・目があったって言うか今ようやく気が付かれましたか・・?
おいおい・・・ここ―扉の所―に立ちつくして結構経つんだけど。
そしてその時のBGMは良くあるダメ家庭の痴話ゲンカだったけどな!

先に気付いた紫色の少女は、何故か微妙に乱れていた服を直し
えらく長いスカートをはたいて・・あ、埃が舞って咳してる。
ひとしきり終わった後に、あまり健康的とは言えない白い顔でこう言った。

「貴方が例の人?」
「ゴメン、何が例なのかが俺には分からない。」

何かを端折りすぎてる気がするぞ・・・この子・・・

「ああ、ごめんなさい。レミィから話を聞いただけでよく知らないの。」
「れ、みぃ・・?」
「レミィは私の友達よ。あまり深くは問わないで。」
「ああ。」

なるほど、それなら何となく話は繋がる・・・?
いやいや待てよ?深く訊いちゃダメってなんだ?なんかあるのか・・?

「あー!お前ってあの時のっ!」

とか、少し考えて・・・もとい少しボケた返答をしてくれる紫色の少女の後ろから
ひょこっと出てきて大声でこっちに指を向けてくれる、例の魔法使い。
・・・やっぱ見覚えあるんだよなあ・・・何処でだ・・?
そもそも・・・う~ん・・・

「いや、どこかであったような記憶はないんだけど・・?」
「それはないぜ?アンタを運んだのは私と霊夢だからな。もちろん覚えてるぜ?」
「とは言われても・・俺は全く覚えてないんだけど・・・」

正直、あの記憶は曖昧すぎて記憶と言っていいのかどうかすら危うい。
夢のような一時とも言えるし、夢にしては身体が動かないという変な夢だったけど・・・

「覚えてないってそりゃあないぜ、こんな美少女を忘れるなんて!」
「・・・・」
「・・・・・・・・・へぇ。」

漏らしたのは紫の子だった。
ぶっちゃけ俺は何も反応できなかったからだけなんだが。
ていうか今のにどう反応したら正解なのか教えてくれよ安西先生・・・・!

「ゴホゴホ・・・まあ、下らない冗談は放っておきましょう。」
「そうですね。是非ともそうさせて貰います、是が非でも。」
「・・・お前らそんなに私が美少女って認めたくないのか・・・!」
「「だって、ねえ?」」

ついハモってしまったがそれはご愛敬。

「言い忘れてたわ、私はパチュリー。パチュリー・ノーレッジよ。」
「おっと、それなら私も一応名乗っておくぜ!魔理沙だぜ。」
「パチュリーと魔理沙・・か、分かった。覚えとくよ。」
「それで、貴方の名前は?」
「そうそう、幾ら何でも人の名前聞いておいて自分は答えないって言うのは・・・」
「あ~・・・それは言いたいんだけどな・・・無理。」

まあ、普通の人なら名乗らせておいて自分だけ名乗らないなんてのは
なんというか、「ナシ」だろうな~・・って思ってたし、流石に訊かれるとも
思ってたから特に動揺はしなかった。だって今更だぜ?うん。

「名前が分からない。ていうか俺が何者なのかさえ分からないよ。」
「・・・ふぇ~・・・」
「ほほぉ~・・それはまた珍妙な事で。調べて良いか!?」
「いやいや、調べるって言ってもどうやって調べるんだよ。」
「そんなの決まってるだろ?こう・・・ナイフとか使って解剖t」
「却下だバカ野郎!」
「バカ野郎ってなんだー!私は女だぞー?」
「私もそれは魔女として賛同しかねるわ。やるなら儀式魔法を用いての透過解析でしょう?」
「おー!そういえばそんなのあったな!」
「あ、何かそっちの方が凄い便利そう・・・って魔女?パチュリーが?」

聞き慣れねえええええええええええええええええええええええええ!
ぶっちゃけ何処までファンタジーに染まれば気が済むんだこの『幻想郷』は!

「そうよ?少し身体が弱くてそんなに全力が出せないんだけどね。」
「でも魔女ってだけあって、結構すごい魔法とか使えるんだぜパチュリーって。」
「・・・なのに身体が弱いって、それかなりマズイんじゃ・・・」
「マズイわねぇ・・どうにかしないといけないんだけど。」

そう言いながら、袂で口を押さえて咳を押し殺すパチュリー。
辛そうだな・・・と、思った矢先にふと閃いた。
・・いや、別にか弱いからって変なことは考えてないぞ?

「この図書館って・・・掃除してるの・・?」
「掃除は小悪魔がしてくれているはずよ。後はたまにメイド長が。」
「ああ、咲夜さんですか・・・あの人ならやってくれてるな・・確実に。」

小悪魔がどんな子か訊こうと思ったけど、多分この広大な図書館のことだ。
今から呼んで貰っても、きっとかなりの時間が掛かるだろうからやめておいた。
そういえば咲夜さんは鼠退治と言っていたが、鼠って誰のことだったんだろう・・・?
というかあれから結構経ってるのにもかかわらず、未だ姿が現れねえ・・・

「ああ、そうだ。」

不意に、パチュリーが声を上げた。

「今からレミィの所に遊びに行こうかしら。どうせ貴方もレミィに会いに来たんでしょう?」
「いやいや、行くのは構わないけど俺はそのレミィって子に会いに行く訳じゃ・・・」
「あら?この『紅魔館』の主に会いたいって言われて連れられてきたんじゃなかった?」
「そうだけど・・・それがどうしてそのレミィって子に会うこと・・に・・・って・・・」

何を言っているのか分からないから、まさかという思いが身体を駆け抜ける。
・・・パチュリーが言ってることが本当だとしたら、俺が会う主って・・・

「もしかして・・・・」
「もしかしなくても『紅魔館』の主はレミィだぜ?」
「ちょっと魔理沙。先に言っちゃってどうするのよ。こういうのは言わせないと。」
「ははは、ゴメンな。今度どっかに連れて行ってやるから。」
「魔理沙・・・」

瞳をキラキラさせながら何をときめいているんだパチュリー・・・
というか魔理沙は女の子なのに、何でこんな妙に格好良いんだ・・・
ちょっとだけだけどドキッとしたじゃないか・・・すげーよ魔理沙。

「え~・・つまりは何ですか・・・?」
「要はそういう事よ。楽しみが増えて良かったじゃないの。」

そう言ってパチュリーは楽しそうに笑った。
・・・もちろん、傍らの魔理沙は常時笑っているというかリアクションが大きくて
とても一緒に飽きそうにない女の子で、でも笑顔の方の印象が強い。
まあ、そんなのを直接言うのもこっ恥ずかしいので。

「魔理沙。」
「ん、どうしたんだ?」
「俺はパチュリーの方が可愛いと思うんだぜ?」
「・・・微妙に私の口調を真似るんじゃないぜ?」
「というかサラッと恥ずかしいこと言わないでくれる・・・?」

胸の前で両手を組み合わせながらモジモジしてる姿は、本当に可愛かった。
白い顔が朱に染まっていくのを見ると、案外ウブな子なんだなと。
・・・というか何だ?パチュリーって意外と今までにないタイプ・・・?

「てかそれだと私は可愛くないって言うのか?」

とか考えてたら、魔理沙が妙なむくれ方をしていた。
今時、ほっぺをプクーって膨らませてむくれる奴なんて初めて見たけど。

「いや、魔理沙は何というか・・・常にある可愛さって感じで。」
「よく分かんないが、とりあえずお礼は言っておくぜ。」
「・・・何のお礼なのよ何の。」
「それは色々なんじゃないかな・・・?」
「そうそう、色々なんだぜ。」
「・・・誤魔化してない?気のせい?」
「「気のせい気のせい。」」

ハモったので流れでハイタッチしておいた。
どうやら魔理沙との気の合い方は尋常じゃなく良いみたいだ・・・不思議。

「お客様。」
「おっ、アンタのお迎えって言うか私たちのお迎えだぜ。」
「ああ咲夜、良いところに来たわ。今からレミィの所に行こうと思うの。」
「承知しております。紅茶とクランベリーケーキのご用意が出来ております。」
「・・待って、ついさっきの会話なのに何で咲夜さん承知してるのさ?」
「メイド長だからだろ?」
「メイド長だからじゃないかしら?」
「・・・二人のメイド長についての認識がぶっ飛んでる気がする・・・」

気が抜けすぎて、つい四つんばいで頽れる。
いや、そんな答えが返ってくるだろうなって微妙に予想は出来ていたはずだ。
でもなんでか、そんなのを実際に聞くと素晴らしいほど脱力してしまう。

「まあ良いじゃないか。メイド長って言っても咲夜しか居ないし。」
「魔理沙、それはあまり言って欲しくないのだけど。」
「でも事実じゃないの・・・『紅魔館』以外にメイドなんて居ないもの・・・」
「それもそうですが・・あ、それではご案内いたしますのでこちらへどうぞ。」
「「はーい!」」
「・・・何だか小さい子の遠出のような感じね・・・」

そんな訳で我等が魔法使いと魔女の愉快な仲間達は、一人の優秀なメイドさんに案内されて
この広大な『紅魔館』のご主人様へと会いに行ったのでした。ちゃんちゃん。

・・とは言ってみたけど、ぶっちゃけ奥へと進む事に暗くなってるのは何故・・・?
なんか怖いんですけどー!?



(続く)

スポンサーサイト
Copyright (C) 綻んだ緋い束紐に。. All rights reserved. Template by Underground
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。