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2009-02-18

『叫喚の間に囁かれる二色の声。』


濡れた窓に、さらにしとしと降り募る雨。
寝台より覗く空は依然と曇天であり、枠より雫が滴る。
見せられていた広大な景色は全て箱庭の偽り。
令嬢はその中で薄笑みの仮面をへばり付かせ、遂に癒着した。

彼女は笑みを絶やさない。
しかし、その顔は既に硬化した金属のように固まっていた。
故に表情は「笑み」しかなく、そこに「笑い」は無かった。

赤光差すこの一部屋の隅で、彼女は一人で過ごす。
周りに燦然と輝く対の瞳は誰かに創られた瞳で、敷き詰められていた。
払暁の中、屋敷は今日も息吹をその一面に広がらせる。
生きも死にもしない、虚飾の世界の中をただ。

『叫喚の間に囁かれる二色の声。』

赤の中、淡々と片腕は忙しなく動く。
既に片腕の肉は削げ落ち、骨すらも切り刻まれていた。
いつからこうしていただろうか、些細な疑問すらも今はどうでも良い。
ただ、身を走るこの身の毛もよだつような感覚に縋っていたい。

「嘘はイヤ、私の中でこれが全ての正義であって。」

黒の中、ひたすらに両手の爪は壁を毟る。
漆黒の闇の中、視界すらも奪われたこの私に視えるものなどない。
いつからこうなったのだろうか、いつしか片腕は動くことを拒絶していた。
いや、拒絶ではなく「無かった」…もう、断たれていたから。

「孤独はイヤ、狂気に触れてもその中で私は私でいたい。」

明色の中、目に差した光明は私の世界を潰した。
触れるものは全てに渡り未知であり、それはこの世界が無くなったも同じだった。
なぜこうなったのか、何もかもの始まりは「あの時」からなのか。
失ったものを手探りで探す日々は、何物にも代え難い恐怖であった。

「喪失もイヤ、私はそこに「ない」と満足できないから。」

暗色の中、ふとした暖かみも色も声も全て、消えた。
手に触れるものはなく全て宙空を彷徨い、私自身に触れることが終点。
これは果たして罰なのか、原初に戻ることは人の身であっての大罪なのか。
だが確かに、これで何が無くなったのかは見当はついた。

「私は、ここにいる。でも、それがイヤなの。」


薄暮、小高い丘の上にて一つの墓が建てられていた。
墓碑には何も刻まれていない、しかしそれでも花は手向けられていた。
誰かが、まるで彼女を偲ぶように。

・・・遠い昔、四方を壁に包まれた孤独の箱庭の中で息絶えた少女が居たという。
彼女は思い悩み、病みながらも生をまっとうしたという話だ。
これは、彼女の思いを綴ったお話だよ。

―ところで、一体誰が彼女の思いを知ることが出来たんだろうね。

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