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2009-02-19

『支配者』


          『支配者』

カラカラと、大きな箱を載せた台車を動かす。
それは、とっても重くて、何だか終わりのない作業。

「よいしょっ・・と。」

台車を、定位置に固定する・・・隣にあるアームを操作して、箱を掴む。
そうして、箱を奥にある部屋の中に、置く。

部屋の中一杯に敷き詰められ、積み上げられた箱、箱、箱・・・
それを確認した後、さらにアームを操作して鉄板を掴む。
そして、部屋に、蓋をする。

そして、僕はこの万力のような
接着剤で引っ付けられたかのような黒塗りのレバーを。

ただ、引く・・・それが僕の仕事。
引き終わった後、もの凄い轟音が工場に鳴り響いた。
あのコンテナが、何処に行くのかは知らない。
これも、いつもと変わらない、何も変わらない。

レバーを引くのは、たぶんこれで3回目。
時間・・は、よく分からないけれど、今日はもうおしまい。
あとは、残った機械の整備をすれば良いだけ。
あ、そうだ・・・報告しなきゃ、管理員に。

僕は、手早くアームをもとの場所に戻して、駆動部分に油を差した。
昨日はちょっと乱暴に扱ったから、今日はどうだろう・・と、思ったけど
特に問題はなかった。

管理員は、何か気に障ることでもあったのか、こっちを見ようともしない。
でも、それもいつものこと・・・きっと、いつまで経ってもあのままだと思うから。

「今日は、3回でした。」
「・・ん、そう・・わかった。」
「F-048062です。」
「了承・・帰って良いよ」
「はい。」

いつも無駄に緊張している・・・僕は何だかこの人は苦手だ。
本当なら、先に認証番号を言わないといけないのに・・・
そうして、更衣室でつなぎから、私服へと着替える。
と言っても、ただのジーパンと、白色の薄手のトレーナーだけど。

ふと、鏡を見る。
そこに映るのは僕だけ・・・別に幽霊なんかは信じてないけど。
僕の髪は真っ白、肌も色白くて。
瞳の虹彩は、限りなく白に近い灰色。
そう、僕らはヴァイスと呼ばれる【白い人】だ。

鏡を前にして、少し身だしなみを整えたあと。
僕は、工場の外に出た。

外に出ると、無機質な水銀燈の灯りが、通路を照らしていた。
僕が住むのは、この地下世界。
正しくは、地下都市・メフィレティ。
一応、地上にも世界はあることはある・・・らしい。
だから、いまでも地上に暮らしている人なんか聞いたこと無い。

水銀燈のほんのりとした灯りを頼りに、煉瓦で舗装された通路を通って家に帰る。
辺りは、薄暗く人気も感じられない・・・いつもはそうだった。

それがいま、僕の目の前には一人の人がいる。
そこには、色が付いた人がいた。
髪は黒、セミロングで先端は少しカーブがかかってる。
黒いトレンチコートを着て、黒の虹彩を持ったその目で。

僕をじっと見ていた。

初めて見た・・・この子がシュバルツ・・・【黒い人】なんだ・・
ぽっかりと、そんな風に思ってた。
見た感じ、どうも14,5ぐらいの少女に見えた。
と言っても、年齢なんかはさして、問題にはならない。
大事なのは、僕が、彼女が、【黒】か【白】か。
その一点だと思うから。

そして。
少女は、右腕を前に出し人差し指と薬指を上に立てた。

――来て。

そのボディランゲージは、無言だったはずなのに
どこか、威厳を感じさせて、そして、優しかった。
基本的に、僕らは彼ら(今は少女だけど)に逆らえない。
いつからそうだったのかは知らないけれど、ずっと。

少女は、踵を返して、遠ざかる。
慌てて、僕もそれに習って、ついて行く。
道中は、見たこともない景色が並んでいた。
だってそこは、今まで立ち寄ることもなかった・・場所だったから。

けど、目まぐるしく変わっていくんじゃなかった。
ただでさえ殺風景な風景が、それさえも越える、景色に。

ふと、目の前を歩いてた少女が立ち止まる。

「・・・なにか、言いたいことはあるかしら?」

雲雀のような声だった。

「いえ、何もありませんけど、ひとつだけ。」
「・・無いのに聞くのね・・・何かしら?」
「何をされるのですか?・・ここに連れてきて。」

そもそも、そこにヴァイスである僕が必要なのか?・・と

「別に、何もしないわよ・・・気紛れなんですから。」
「・・・・・・・解りました。」

たとえ、それがどんな理由であっても
意見する、なんてことは僕には出来ない。

「そう・・じゃあいらっしゃい。」

少女の目前には扉が一つ。
ただ、それはとても奇妙な光景で・・・
扉はある、けど、その周りにあるはずの壁がない。
そこには、ぽつんと、扉があるだけだった。
少女は、扉のノブを回し、開いた。

扉の中には、空間があった。
空間には、見慣れたモノが所狭しと。
現実には、空間・・・部屋に置かれているのはモニターだった。

しかし、僕の仕事内容には。
モニターを扱う作業など存在しない。

そう。
目に映るのは。

僕の手僕の手白い手白い手ボクの身体カラダ躯白い白い
シロイテテテアシ足頭頭アタマ・・・・・・・・・・ボク、僕。

ソレは、ヴァイス。
現状意識が断絶されそうになる。

「先に言っておくけど、ソレは、アナタであってあなたではないわ。」
「・・どういう意味です?」
「世界って言うのはね、存外、汚れているモノなのよ。
少なくとも、あなたが今まで生きてきて、経験したぐらいでは
語れないぐらい・・・ね。」

・・よく、解らない。

「時にあなた、自分が何をしているか、知っていらっしゃって?」
「・・仕事です、コンテナ運搬の。」

何を聞いてるんだろう。

「じゃあ、いったい、ソレは何なの?
・・と言っても、解らないでしょうね、きっと、何も知らされてないでしょうから」
「・・何です?」

まだ、気持ちの整理が出来ない。
なにか、ここに来てはいけなかったんじゃないかって。

「あれ、アナタ。」

思考が止まる。
アレは僕?

「アナタの仕事は、私たちから言わせれば『廃棄工場』なの。
だって、壊れたモノなんて、いらないでしょう?
だから、棄てるの、当然でしょう。
その分、アナタは同胞殺しをしているのですけど
私たちには関係がないから、何も思いませんしね。
・・・まぁ、他にもありますがね。」

は。
ははははははははは。
なんだか、笑いが止まらないや。

「けど、何でそのようなことを僕に言うのです?」
「何故?・・そう、理由がいるかしら、やっぱり。」
「はい。」

彼女は少し、首を傾げた後。

「そうね、直接的にアナタに思い入れがある・・で、良いかしら?」
「それだけ・・ですか?」
「いいえ、勿論他にありますわよ。
意外とね、ヴァイスと私たちの生活ってあまり変わらないのよ。
・・・単調、と言う点で。
それに飽きてしまったのよ、簡潔に言ってしまえば。
・・・・それにね。
本当のところ、理由なんか私にも分からないわ。
もしかしたら、そんなモノ、無いのかもしれないわ。」

さっきから、彼女は笑顔で喋っている。
心底、楽しいんだろう、今の会話が。

「さて、アナタ。」
「はい。」

雰囲気が変わった。

「おゆきなさい、何処とでも。」
「何故です?」
「あら、もしかして今の話を聞いたにもかかわらず
まだ、あそこで働くつもりなのかしら?
今までのように、無心で働けるのかしら?」

そんなの、無理だ。

「でも・・何処に・・」
「さぁ・・・ただ、気の向く方に行ってはどうかしら?
もしかしたら、ここではない、何か楽しいモノがあるかもしれないわ。」
「でしたら、アナタは・・・」
「あら、私はシュバルツよ?
ここを出るわけにはいかないじゃない。」

それは、そうだった。

「じゃあ・・・」
「ええ、気にしないで、大丈夫だから。」

・・・。
それを聞いた僕は。







白と黒。
ここでは、絶対的と言っていいほど
あり得ないコントラストを、遠目から覗く・・・
いや、もとい見つめる人がいた。

「・・ちょっと!何でこんな所にいるのよ!」

怒気の籠もった声が響く。
声の主はアリシャという女性。

「いや、よく見えるだろ?ここ。
というか、今更言うなよ、さっきまでここで見ておいて。」

ただ、いる場所が問題だった。
方舟の、展望部でも、甲板でもない。
外郭の先端部分という、一つ間違えば死にかねない場所。

「見えるけどもっ!あんた操縦は?!」
「オートパイロット。」
「・・あるの?」
「ある。」

半信半疑、と言った風だった。

「けど、シグナ。」
「ん?」
「私は、羨ましいと思うわ。」
「そう・・けど、やっぱり、それはそうであって
誰にも言えることだと、思うの。
同じように・・とは言えないけど、きっと。
だから、と言う訳じゃないけど、世界って
そう言うモノ何じゃないかな、ずっと、汚れてるんだ。」

白と黒との様子を、二人は見ていた。
そんな二人に、詳しく語ることは無かった。
だって。

それが、きっと・・・・
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