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2009-02-19

『神事、流転せし彷徨太陽』


          『神事、流転せし彷徨太陽』

宣誓するは神さびた古都、地底の館。

「追いやられし異形の妖どもよ!咆哮を上げ驀進せよ!
我が手には熱かい悩む神の火あり!
妨げし者どもは駆逐せよ!瀕すれど我が力あり。
今よりこの先 我らが正体露見させんば今生の覇権を握るものなり!」

「さあ、進め!我こそは、歴とした稀代の末裔は地獄鴉の空なり!
御神より授かりし八咫鴉の恩恵をば、この手にありや!
覇権を握りし我らが地底、全ては主さとり様への献奉なるぞ!」

上がる歓声、狂気に満ちた地底の館。
蠢く悪鬼羅刹に百鬼夜行、そこにあるのは忌みじく思われし妖ども。
しかし蜂起の機を逃すほどの愚考は持ち合わせてなどいない。
あるのは自らの欲を満たす、再度やってきた地上への憧憬。
それは暗い闇の底よりも遙かに誰かに望まれた地。
暗所に於けるあれらの生は、しかし発起するには十分な理由であった。

されど影より慮りし者の影あり。
頭頂に二つの耳あり、手には猫車を押す彼女は燐。
火焔猫の名を持つ彼女は、もとより空の友人であった。
しかし彼女は今、地霊の館にて行われる演説を聴いてはいない。
胸の内で思うことはただ一つ、戻って欲しい、と。

「また勝てなかったよ・・ったく、どうしろってんだ。」

力あることが正義ではない。
それは、彼の力の鬼も知りうる不変の理、故に真実。
たとえその力が、比類無き無上のものなれど変わらない。
真に相対すべきは外面ではなく、自ずと知れ。

「そう言わずにさ、とりあえず考えてまたやろうよ。」

それは、否、それこそ誰よりもその身に染みて理解している筈なのに何故。
空は未だそれを認めずにその異能を振るうのか。
何故、何故と、燐は苦悩するがしかし、故に理解は及ばぬ。

「それって結構無茶言ってるよな、燐って。」

いつ何時でさえ、勝利を知らぬものが力を得たとき。
得るものは力でなく、ただ弱さ故の、未熟さ故の慢心。
そして慢心こそ至高の弱者たる所以であることを、知ることはない。
鍍金で固められた力に、自信が溺れている限り、二度と。

「でも無いさ、いっつもまっすぐいったら勝てるものも負けちまうさね。」
「それもそうだけど・・ひとまずは帰ろうじゃない。」
「そうだね、今日もさとり様に黒星報告だね。」
「うっ、うるさいなあ・・・分かってるってすればいいんでしょ・・」

邂逅する。燐の記憶に残るほんの二日前の記憶。
彼女は走る。その際に雫が落ちたように見えたのは幻覚か、それとも。
賽の河原に遅々と流れる一隻の舟を横目に見つつ
空の暴走により吹き出した間欠泉へと、走る。
その間も、朗々と響く諧声は地底の穴を廻り巡る。

「さあ!我らが地霊は今時をもって浮上!進軍する!
各々、友誼を組み合い小編隊を持って侵入者を撃滅すべし!
我こそはと!名を上げし者は対違うときに迎え撃て!征け!」

爆裂する閃光と爆音、燦々と煌めくその炎は当に獄炎。
地上において、史上最大の威力を持つ弾頭、故に禁じ手。
空は、今その力を思うままに振るっていた。
今までの鬱憤を晴らすかのように、それこそ気侭に、無情に。
無慈悲な炎は何もかもを焼き尽くす。彼女が唯一だと思いたいが為に。
世界の全ては、空一人が思うがままであると自覚するかのように。

魂が浮上する。間欠泉の水に紛れて。
汀に佇む燐は、変わる空を見ていられない、見てはいない。
知っているがしかし、それを空だとは認めていない。
しかし、着々と魂を吹き上げる水に紛れ込ませている。

「私には止められない、止まらない。空は止まら・・・」
「誰か、烏滸がましいとは思うけど、それでも今だけで良いから・・」
「地上の人よ、誰か空を助けてあげて。」

想いは籠もる。上がる思いに乗って。
切に願った彼女の想いは、確と届く。

―――そして、洞穴は開かれ、地底へ降り行く影二つ。
賽は投げられた。

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