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2009-04-20

幻想の果つる先、夢と境の向こう側へと。

          『幻想の果つる先、夢と境の向こう側へと。』

【4】



てこてこと歩いてく内に、俺は一つだけ大事なことを知った。
まあ、当たり前だ・・・とか何とか言われたら身も蓋もないんだけど・・・
つまりそれは何かって言うとだな。

「見えてるものが近いって誰が決めたんだっつーのっ!」

・・・湖を通り過ぎて、その奥にあった木々を抜けて
そして鬱蒼とした森へと変わっていくその様を、俺はもう延々二時間は見ている。
別に迷っているわけではない。ちゃんと足下には舗装はされていないが
明らかに人の通り道、所謂「獣道」が作られていることが素人の俺から見ても分かる。
それに、こんなすごい森の中からでも『紅魔館』は見えるという・・・

「あれってどんだけデカいんだよ・・ありえねえだろ・・・」

思わず独りごちてしまうのも仕方ない。
何せさっきから歩き通しで、そろそろ体力的云々よりも精神的にキツい。

「いったいいつまで歩けb・・って急に開けたな、おい。」

気付けば俺は森を抜け、左右に木々が立ち並び正面奥に門が見えるという・・・
どう見てもお金持ちのお屋敷前です、本当にありがとうございます。
でもこの『幻想郷』ってそんなお金持ってる人居るんだろうか・・・?
具体的な例を挙げると真っ先に思い浮かんでしまう紅白が、俺の脳内なのに
まさに鬼のような形相で、強烈な死線(誤字ではない)を感じ、すぐに頭を振った。

正門(?)に近づくにつれて、門の前に人影を見つけた。
まあ、こんな所に居るくらいだからやっぱお金持ちか、それとも門番かな・・・とか
そんなことをふわふわと思い浮かべながら、その人に近づいていくと。


見事が鼻提灯が作られt・・いや、いらっしゃいました。


この時点で、俺の中の選択肢は全て壊滅させられた。
曰く「お金持ちは鼻提灯つくって仁王立ちしながら寝たりしない。」
曰く「門番が門の前で寝る訳がないだろう・・・常識的に考えて。」

・・・しかし困った。
もはや、顔を見たら爆笑必至なので意図的に見ないようにしているが・・・
とりあえずこの人をどかさない限りは『紅魔館』に入れそうにもない。
寝てるくせに、妙な威圧感のある仁王立ちだから困る。
でも、一応意を決して訊いてみた。

「あの~・・・?」
「・・zzz・・ぁあ!違います・・・そこはパッ・・・zzz・・・」

パッ・・・?謎は深まった。
というか何の夢って言うかどんな寝言なんだよって言いたい!
でも言えないこのもどかしさ。ハンカチ噛んでキィーッって言いたい!

「えっと・・起きてくださ~い・・・・」
「zzz・・・はにゃにゃにゃ・・・はぅあぁっ!」

適当に肩を揺さぶってたら、すぐ起きた。
・・本当にこの人は何なんだろう・・・ますます分からなくなってくる・・
起きたショックから、両手を前に出して―まるでファイティングポーズ・・―はわわわわ言ってる・・
そして、あまりにも鼻提灯が衝撃的だったせいか全く気付かなかったけど
薄緑色のチャイナドレスに身を包み、中華帽に龍と書かれた星のワッペン?が付いている。

ここから導き出される答え・・・それは・・・!

「・・はっ!まさか中国人か!?」
「違いますっ!!私は中国じゃないです!!」

コンマ二秒で返答されました。

「え・・?そんな格好してるのに中国人じゃないの?」
「当たり前です!」
「すっごく紛らわしいよ・・そういうのってキャラ付けって言うんじゃ・・・」
「それは少々、この『幻想郷』では言ってはいけないような・・・」
「いや、たぶん『幻想郷』に限らずともどこでも言っちゃダメなような・・」

何となくだけど、そういう世界の常識って言うのがあっても良いと思うんだ。

「ですけどね、ここ『幻想郷』ではそういった常識に囚われていてはいけないんです。」
「へ~、それはまたなんで?」
「『幻想郷』・・・ですから。」

・・・なまじ期待すると失うものは大きいと言われる。
例えば、信用とか絆とか、そういった情緒面の何かが主たるものだったりする・・・
というのは俺のマンガとか本の知識なんだけど・・・
ちなみに、どうでもいいかもしれないけど、この場合で俺が無くしたものは。

「はあ・・・」

少しでもこの人を凄い人かなと思ってしまっていた心、だったりする。
しかもかなりいい顔して、遠い目で言われた日にはもう溜息しか出ない。

「あの、すいません。」
「そう、この『幻想郷』は全てを・・っと、何でしょうか?」
「この中に、というか『紅魔館』に入りたいんで、そこ・・のいてくれません?」

何かとてつもなく語っていそうだったこの人に、本題を訊いてみた。
そう、この人さっきからこの門の前から微動だにせず、立っているんです。

「え~と、それだったらアポとか取ってらっしゃいますか?」
「アポ・・・ってアポイントメント?」
「ええ、こんな所ですがお嬢様含め『紅魔館』の方々は忙しいですので・・・」
「・・・いやいやいや、ここでどうやってアポを取れって言うんだよ・・」

そもそも『幻想郷』に電話ってあるのか・・・?
それ無しだと手紙?どうやって?俺ここに来たばっかりでどうやればいいのか知らんぞ?
ていうかお嬢様て・・・じゃあ貴族か何かのお屋敷?
・・いや、『紅魔館』だからお館?どっちでも良いって言うか違いが分からんが。

「まあ・・・」
「えっと、まだなんか必要なものとかあったりするんですか?!」

これ以上あるとなると、俺にはどうにも出来ない。

「あくまで形式上のものですし、そもそもアポって何なんでしょうね?」
「・・・ちょっと待ってください、言っている意味がよく分かりません。」

そして俺の頭の中は今ちょっとびっくりドンキー状態でパニックだ。
おいおい、必要とか言いながらこの人自身が分かってないって何だよ・・・

「いや~、咲夜さんからそう言えって言われてるだけで私には何の事だか・・
あ、咲夜さんって言うのはウチのメイド長の事で、すっごく有能なんで私の憧れなんですよね。」
「はあ・・いや、それで通してはくれないんですか?」

正直、そんなに話し込まれても俺にはさっぱり分からない。

「通すのは・・いや、門番の一存だけで決めて通しちゃったら後で咲夜さんから折檻を・・・ぐす。」
「いや、そこで泣くなよ・・っていうか門番だったんだ・・・てっきりアブn・・何でもないですよ?」
「はい?ああ、はい、私ここで門番を務めさせていただいてます紅美鈴と申します。」
「・・・えっと、美鈴さん?」
「そうですよ?どうかしましたか?驚かれているようですけど・・・」

・・・いや、待て。
結果を急ぎすぎるとどっかに間違いがあるはずだ、決め付けるのは早計だ。

「その、ですね。」

深呼吸して一拍おいてみた。
ていうかそうでもしないと、すぐにぶっちゃけて仕舞いたくなるほど、これはヤバい。
何がって言うか、いやもうどこから言えばいいのやら・・・

「着ている服ってチャイナドレスですよね?」
「そうですよ♪実家からの贈り物で一番気に入っているから着てるんですよ~」
「えっと・・・何かされてます?こう・・武芸とか・・」
「あ、分かります?太極拳から八卦掌、八極拳や他の中国拳法とか得意ですよ~」
「もう一回だけ、確認したいんですけど、お名前ってなんでしたっけ?」
「忘れちゃったんですか?・・『紅魔館』で門番をしてます紅美鈴と言いますよ?」
「一つだけ・・・良いですか?」

俺の心は決まった。
というか、頼むから言わせてくれ。お願いだから、本当に。

「良いですよ?どうしました?」
「・・・どっからどう見ても中国人じゃないかああああああああああああああああああああ!!!!」
「わひゃーーーーーーーーーっ!!!」

はっ、ついあまりの突っ込み処の多さに叫んでしまった。

「そんな訳ないでしょう!私は中国人なんかじゃないです!」
「いや、そりゃ俺もね?チャイナドレスとか拳法とかまでならまだ分かりますよ!
その辺ならまだ、”ああ、中国が好きなんだ~”で終われますよ!でもっ!!」
「でも、何ですか!?」
「名前でアウトだと思うんですよ・・どう考えても・・・」

いや、もうホント突っ込ませてください・・・
これだけは他は許しても俺だけは許すことが出来ない!

「紅美鈴(ほん めいりん)ってどう聞いても中国名じゃないか!!」
「あの~・・・何か勘違いされてません?」
「・・・・へ?」

・・・すごく・・・不完全燃焼です。

「あの~、何だかすごく言われてますけど・・・私は中国人ではないんですよ。」
「いや、だから・・・どう考えても・・って、え?」
「ですから、「人間」では無いんですよ。」
「・・え~っと、それだとつまり美鈴さんって・・・」

恐る恐る訊いてみるも、凄く嫌な解答しか予想できないのがイヤすぎる。
なんだろう、ここ数年流した覚えのない冷や汗とかが背中を伝ったのがやけに分かった。

「「妖怪」、ですね。」
「HAHAHA!妖怪!ようかい!ヨウカイ!YOHKAI!」
「いやそのあのその、えっと大丈夫ですか~?」
「・・・まさか本当に「妖怪」だったりしちゃうんですか?その態で・・?」
「そうですね~、何の妖怪かはあまり知られてないので、言っても分からないんですが・・」

・・・なんだそれ?
言っても分からないっていうことは・・・この、限りなく不幸っぽい美鈴さんは・・・
本当に妖怪、だと考えた方が良いんだろうか?

「美鈴さん。」
「あ、美鈴で良いですよ~♪名前で呼んでくれるだけで嬉しいですので~」

いったいどういう境遇・・むしろ職場なのかが非常に興味がある。

「とにかく、通しては貰えないんですか?」
「私だけではどうしても決められないので・・通しちゃうと私の命に関わります・・」
「・・ま、まあまあ、無理ならこのまま帰りますし良いんですけど・・・」

元々は『里』に行くつもりだったしな。
ちょっと長い・・長すぎる寄り道だと思えばなんてことはない。
そうして、美鈴に会釈をして帰ろうかなと踵を返した瞬間。

―――・・・お通しして良いわよ、門番。

と、ルーミアでもチルノでも霊夢でも美鈴でもない声が聞こえた。
がしかし、だ。俺はもう驚かない。
なぜならここは『幻想郷』で、常識に囚われてちゃ何も出来ないと言うことを知ったからだ。
主にここ数時間で学んだけどな・・そんなに間違ってもいない筈なんだ・・

「あら、お客様。もうお帰りになるなんてそんな勿体ない。」

僅か鼻先三寸、気付けば目の前・・っていうか冗談でも何でもなく
本当に超目前に、俺は目を閉じていたわけでもないのにメイドさんが居た。

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっっっ!!!」
「あらあら、困ったお客様だこと。」
「あの、咲夜さん・・・どうしてここに・・?」

突然の登場に思わず2メートルほど後ずさりした俺だが、どうやら会話から察するに
美鈴の上司?の「咲夜さん」と言う人らしい・・・このメイドさん。
というか、やたら美人だなこのメイドさん・・何か?『幻想郷』は美人しか居ないのか?

「お嬢様が会いたい、と仰ったのよ。それでお迎えに上がったまでよ。」
「はぁ・・そうだったんですか。てっきりまた私が何かしてしまったのかと・・・」
「あら?何かされるような心当たりでもあるのかしら・・?」
「いえいえいえいえいえいえいえいえ!!!ありませんともっ!!」
「・・・えっと、俺はどうしたらいいのかな?」

すっかり気分は蚊帳の外でちょっとだけ傷心。
というか・・美鈴はこの「咲夜さん」が大好きなんだろうなと、見てて思った。
きっと天然なんだろうけど、この「咲夜さん」もそんなに嫌がってないようだ・・

「申し遅れました。私この『紅魔館』でお嬢様直属のメイドをさせて頂いている十六夜咲夜と申します。
この度は、ウチの門番がとんだ非礼と、お迎えに上がるのが遅れてしまい申し訳ありません。」
「ああ、いや、そんな頭下げられるようなことは何も・・・」
「お客様がお優しいお方で安心いたしましたわ。それでは、お連れいたしますので付いてきて下さいませ。」

そういった直後、何故かさっきまでは門の外にいたのにも関わらず
一瞬の後、気付けば門の内側へと入っていて門を開けていた咲夜さん。
・・というような感覚がしたけど、きっと俺がボーッとしてただけなんだろう、うん。

「お客様、こちらへ。」
「ああ、うん。分かった、ありがとう。・・・っと、美鈴ー!」

咲夜さんから呼ばれているが、その前に俺はしたいことがあった。
声に気付いてか、すぐさま振り返り大きく手を振って応えてくれた。

「はへっ!?なんでしょうかー!?」
「話してくれてありがとー!」
「いやー!それくらいでしたら結構ですよー!いつでも来てくださいねー!」

入れない。そう言いつつもちゃんと話し続けてくれた事に感謝したかった。
あそこで入れないだけの一点張りだったら、俺は多分、もうここに足を運ぼうとは思わなかっただろう。
それくらい、美鈴にはすごく良い感じを受けた。

「そろそろ、お屋敷に着きますよ。」
「ああ、ありがと・・・・ってでけええええええええええええええええええ!!!」
「お客様、驚かれるのは結構ですが少し声が大きくございます。お控え下さいませ。」

軽く窘められてしまった。・・・このメイド・・・出来る・・・!
真っ直ぐ正面を見据えてみれば、気付けば本当に扉の前まで俺は来ていた。

「こちらです。」

そして、俺は『紅魔館』に足を踏み入れた。



(続く)

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